2017年7月16日日曜日

蘇る変態

よくここまで自分の内面(エロ好き)をさらけ出せるな!というのが第一印象。本のタイトルも『蘇る変態』。こんなタイトルをつけられる勇気にある意味敬意を感じる。

そういう内容だけではもちろんなくて、星野さんの仕事への想いや孤独感、音楽業界への考えなどにも触れられる。

そしてくも膜下出血のこと。闘病生活について書く筆が冴えている。なんというか素晴らしいバランス感覚。つらい症状、術後の苦しさ、ストレスの多い入院生活。お医者さんや看護師さんとの笑えるやり取り、病気を通じて得たもの。そんな諸々を明るすぎず、でものびやかな心を通して読ませてくれる。

この本に限らず星野さんは言葉の選び方、合間合間のエピソードの入れ方がうまい。でも笑わせようとしているというより、いい感じに気が抜けていて自然体。おそらくそれは彼の音楽や演技にも言えることなんだろうし、人気の理由でもある気がする。

この人のこと嫌いな人っているのかな。

文 ちゆき


志津図書館で借りた星野源著『蘇る変態』

※ 以下ちゆきTwitterより(2017/07/03)
近くの図書館でいくつか本を予約しているんだけど、人気な本ばかりでどれも何十人待ち状態。

昨日図書館から電話があって、私の順番になったからメールで連絡したけど、エラーになってしまったとのこと。docomoを解約してUQモバイルにしたけど、図書館に登録してるアドレスの変更は忘れてた。

電話口でお礼とお詫びを伝え、「ちなみに(順番が来たのは)どの本でしょうか?」と聞いたら『蘇る変態』だった。

「星野源さんの本ですよね!」と明るく答えたけど、内心女性の司書さんに図書館の中でそんな言葉を言わせてしまったことを申し訳なく思った。。

星野源さんの本でも『働く男』とか『そして生活はつづく』とかなら良かったのに、と決して悪いことはしてないはずだけど恐縮してしまった昨日の夕方。

2017年2月15日水曜日

112日間のママ

最愛の妻を悪性乳がんで亡くしたニュースキャスターの手記。転移を告知するか、仕事を辞めるか、緩和ケアにするか、延命しないか。治療を支える夫として決断に悩む清水健さんの切実な言葉に引き込まれます。

今このタイミングで妻とシェアできてよかったと思う。第二子が生まれたばかりの僕ら夫婦には感慨深い話だった。もし自分たちが同じ運命に置かれたらどうするか?病と死、生きることへの願いと選択。その実録は、今愛する誰かのために悩んでいる人に寄り添うような、優しい問いかけにもなっている。

『巻末の写真ではどれも奈緒さんが本当に幸せそう』と妻の感想には綴ってあった。本当にその通りの素敵な写真たち。このまま、この二人に生きる未来が続いて欲しかったな。

"僕らの選択は、僕らにとっては「正解」だった、誰になんと言われようとも。そして、こういう「夫婦の選択」があった、ということをひとつの参考にしていただければと、切に願います"



妻が志津図書館で借りた『112日間のママ』
清水健 著 (小学館 2016/2/13)

2017年2月4日土曜日

112日間のママ

奈緒さんの強さに驚いた。妊娠初期に乳癌とわかり、どれほどショックだっただろう。出産を強く望み、周りを思い弱音を吐かず、ずっと笑顔で過ごされた。

そして本当はどれだけ苦しく心残りだっただろう。112日間のママ。私の息子も現在3カ月。これからの成長をご主人と見ていきたかったはず。その心情を想像するだけで切ない。

清水さんは「自分ばかり弱音を吐いてしまった」と書かれているけれど、彼もどれほど悩み苦しんだだろう。奥様の病気を少数の人にしか明かさず毎日キャスターとしてカメラの前に立ち続けた。奈緒さんの治療では大事な選択の度に葛藤し、「スイッチ」を押す。

最期の場面では何枚ティッシュを消費したことか。お互いを心から思いやる、強い絆で結ばれたご夫婦だ。

巻末の写真ではどれも奈緒さんが本当に幸せそうで、とても素敵な女性だと一目でわかる。

当たり前のように感じてしまっている家族の存在と日常を大事にしなければと感じた。

志津図書館で借りた『112日間のママ』
清水健 著 (小学館 2016/2/13)
文 ちゆき

2017年1月30日月曜日

時をかけるゆとり

読みながら何度も吹き出してしまい、夫に不審がられた。

失礼ながら、ひとつひとつのエピソードは本当にくだらない。けれどそんな出来事に対する朝井リョウ氏の観察眼やフレーズが冴えまくっていて、つい笑ってしまう。

特に驚きを表現するときや彼自身につっこむときの表現が最高。それまでの文章から1行空けて「違った!!」「煮え切らない!!」のようにそのときの心情が実によく伝わるモノローグを入れてくる。あと、

「…してもらってr」

「僕が代わりに授業出ますから」

のように、会話が分断されるときの英小文字は視覚的にも楽しい。

小説でも朝井氏の文章には惚れ惚れとしてしまうことが多いが、エッセイでは彼のダサさ(いい意味で)をより面白く伝えてくれる。

個人的に特にウケたのは『便意に司られる』『ダイエットドキュメンタリーを撮る』『黒タイツおじさんと遭遇する』。

有益とは言いがたいがどのエピソードも笑いを与えてくれる、おすすめの1冊。


志津図書館で借りたエッセイ『時をかけるゆとり』文藝春秋
朝井リョウ著 (2014/12/4)
文:ちゆき